熱帯果樹観察室
No.1:パッションフルーツを育ててみました

6.花芽形成・出蕾・開花
 
パッションFの結果枝では栄養生長(ツルが伸びる成長)と生殖生長(花芽形成)が平行して進みます

 つまり、成長点をもつ枝でのみ花芽形成が行われる、と云うことです。また、栄養生長が抑制される様な条件下では生殖生長も抑制されがちになることが考えられます。
 パッションFは、水や肥料を多く必要とする植物なので、花芽形成を行う頃にはしっかり施肥、灌水を行うことが大切です。
 花芽が形成されたにも関わらず、出蕾前に黄色くなってポロっと落ちてしまうことがありますが、これは栄養不足も大きな原因ではないかと考えています(図11)。


図11:黄色く変色し落下直前の花芽

 張・鄭(1989)は、台湾で行われたパッションF(台農1号)の温度が花芽形成に及ぼす影響の実験では、パッションFの花芽は20〜30℃で花芽はよく形成されるものの、25℃以上のときは花芽消失率が高くなることや高温区(25-30℃)は中温区(20-25℃)に比べて何日か花芽形成が早く花芽形成位置には差がないことや、極端な高温(30℃〜35℃以上)や低温(20℃以下)では全く花芽形成しないことが観察されています(表1)。

表1:温度がパッションFの花芽形成に与える影響(台湾)

(張・鄭.1989.より抜粋)


 また小笠原からも同様に25℃の花芽出現率が良いことが報告されています(表2)。

表2:日中温度がパッションFの花芽出現率に与える影響(小笠原)

(小笠原のパッションフルーツ.2002.より抜粋)

 更に、温度条件が満たされていても光量が一定以下になるとパッションFは花芽形成されないことも報告されています(張・鄭.1989)。
 人工気象室内において花芽形成が止まった頃の光積値を測定したところ約283cal/c/日(平均日長にすると11時間強)であり、台農1号の花芽形成に必要な光量はこれ位かと考えられます。
 小笠原ではインキュベーター(恒温器)内での実験で、気温25℃条件下で、明期10.5時間では花芽分化は発生せず、明期11時間で花芽が発生したという報告があります(表3)。

表3:パッションFの明期時間と花芽発生

(小笠原のパッションフルーツ.2002.より抜粋)

 従って、結果枝が古い枝や他の結果枝の下に潜り込んでしまう様な樹では花芽が形成されにくくなります。
 古い枝の剪定や、結果枝の誘引などをこまめに行うのが安定着果には必要です。
 パッションFの花芽形成は、温度、光線、樹勢の全ての条件が揃ったときに良好な結果が得られるものと考えられます。

 今回の栽培では開花は3月29日定植約4ヶ月後)から開始し、6月22日まで続きました。つまり開花期間は85日間続いたことになります。
 開花は6月1日〜10日に大きなピークを迎えましたが、その前に5月1日〜5日にも開花の小さなピークがあった様です。
 この様にパッションFの場合、開花時期の開花数に波がある様です
 開花数に波がある場合、農業を行っている方は「月齢(潮汐)」と関連づけて考えがち(農作業の多くは陰暦を目安に行われます)ですので、開花数のグラフに新月・満月(大潮)を組み込んでみます(図12)。


図12:開花数と月齢(潮汐)

 すると2回の開花ピークはいずれも満月の後にある様に見えます
 もしかするとパッションFの花芽は満月時に多く形成されるのかもしれません。
 パッションFの花芽形成に日照時間が関係していることや、日照は電照でも補えることなどから月光のわずかな明かりでも花芽形成に影響するかもしれない、など推察されます。
 ただ今回のデータだけでは、はっきりしたことは云えない様です。


○引用文献
 張育森・鄭正勇.1989.百香果開花習性興花形成之研究.博士論文.国立台湾大学園芸学研究所.
 小笠原のパッションフルーツ.2002. 東京都小笠原亜熱帯農業センター、東京都産業労働局農林水産部


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