臨死体験の事例集

 

Y・I 氏(3)

 ■「臨死なき臨死体験」(3)  

  Y・I氏の二度目の手紙の後半を掲載します。この手紙についての私の感想は、Y・I氏に差し上げた私からの返書をそのまま掲載することで代えること にしました。

 一度目の手紙と、この二度目の手紙の前半は、以下をご覧ください。 

Y・I 氏(1)  Y・I 氏(2)



◆それだけしかない、それだけはある

  以上の3つの出来事は厳密に言って「光の体験」につながっていると言えるでし ょうか。確信はありませんが、この3つのことは僕にとっては、「最も切実な死の 問題」について、これ以外にないものですし、因果関係という点では必ずしも一つ のこととして括ることができなくても、気持の流れとしては深く続いているものと 言うしかないという気がします。

  第一のケースは文字通り臨死と言えましょうし、姉の場合は自分自身に起こった 出来事ではありません。最後の自分自身の内心の大きな変化も、よくよく考えてみ ないと、それが何を意味しているか今だにはっきりとはしていません。何故それが 「光」とつながるのか、と聞かれると何も答えられない気がします。

  ただ、これらの3つしか死につながっている事柄はありませんし、明確に因果関係 を述べることは出来ないまでも、やはり、これしか思いつきません。『これしかな い』とは言えます。老人の頑迷固陋でしょうけれど「もうすぐ死ぬ人間にとっては」 ただそれだけしかないのです。それだけしかない、というのは、それだけはある、 ということも意味します。無理にこじつけるよりも、むしろ素直に「自分にはそん な風にしか考えられません」と申し上げた方がよいかと思うのです。

◆「人様にはとても言えないや」

  石井先生は人間関係で何か変化はなかったかという点を聞いていらっしゃったと 思いますが、何しろ僕はあの光の経験をただもうひた隠しに隠そうとばかりしてお りました。毛ほども悟られまいと努力していたわけです。友人その他に尋ねてみて も、あまりはかばかしい証言は得られそうにもありません。ただし、自分の中では 非常に変わったと言えることがあります。先日も申しましたように、死を恐れなく なったことです。僕は死に関してはバカバカしいくらい恐怖心を強く感じて生きて いましたし、何故こんなにもいやでたまらない人生を、それも更に情けないことに、 自ら思い切って断ち切ることも出来ずに、ただ死ぬことが出来ないからという理由 だけで、のんべんだらりと生きていたのに、そういったモヤモヤが今はすっかり消 えています。「もういい、これでもう全ていい」と感じながら生きていることが出 来るようになっています。

   今では「何故こんなにいやなのに」が完全に消えてしまいました。内心が本当に 大きく深く変わりました。ただ、その変化を別の人間の目から見て、それと明確に 証言してくれる人はいないだろうと思いますし、自分でもどう説明したら分かって もらえるか、と思うと絶望的になってしまいます。

   心の一番深いところで肯定的になりました。死んだ後まで永遠に悦びに満ちて見 通すことが出来ます。迷いはもうありません。  人間はどこから来たのか  人間とは何か人間はどこへ行くのか この根源的な問が嘘のように跡形もなくなってしまっています。大威張りで自慢 をすれば、自分はあの光から来て、あの光の中へ帰って行く。全ての存在するもの と共に、今、光の中に在り、光と一つであり、光の中に溶け込んで行く。全ての疑 問は去った、そんな思いです。輪廻転生は全て光の中なのです。

  もっと、もっとそっくり返って大威張りをすれば、宇宙原理も、人間原理も、神 様原理も一つだよ、と言うことが出来ます。まぁ何という大法螺吹きでしょうか? 吹き出したくなりますね.でも、やっぱり本音なんです。人生って何て不思議なん だろうと思います。

   石井先生、僕が何故人様にはとても言えないや、と思っていたか、よくお分かり 頂けたことと思います。どう考えても「神がかり」とか、「狂ってる」とかになり ますでしょう? 誰に分かってもらえなくても仕方がないと諦めるしかなかった理 由が十分に通じましたでしょうか? 僕はこれはもう仕方がないと思っています。 でも、どうしてもこれはこうなんだと言う「しかない」のです。どのように馬鹿に されようと、どのように呆れられようと、もうこの年では開き直る「しかありませ ん」。もっとも遠藤周作氏のように、いざ本当に死ぬとなった時には「オラ、死二 タカネェ! 死ヌノナンカ大嫌イダァ!」とわめきちらして逝くだろうと思います。 「それしかない」のです。本当にそうなる「しかありません」。

◆「光」についてヒントを与えてくれた本

   天外伺朗氏のものの考え方が大好きで深く影響を受けました。僕目身の人生観は 天外氏に負うところがとても大きいです。昏迷の真っ只中にいた頃がなんとか自分 なりの整理をつけることが出来たのは、天外氏のおかげです。でも、それでは天外 氏は「光」のことをどう考えているのか、と聞かれたらなんにも知りません。随分 自分勝手に、自分なりの人生を歩いて来たんだなぁ、と思うばかりです。

   あの「光」の意味が何だったのか、先生はとても大きなヒントを与えて下さいま した。天外氏の助けを借りてどうにかまとめてきた僕なりの人生観は、あの時の光 とどう関係しているのか、その一点についても大まかな所、人様の納得は得られな いにしても、自分なりには統合できそうです。

   先生のご本がなかったら、自分だけではどうすることも出来ませんでした。本当 に有難うございました。心からお礼申し上げます。  この後も、どうかお元気で、さらに、さらにご活躍なさいますようにお祈りして おります。新しくご本を出版なさるようなことがありましたら是非お教え下さい。 先生ほど僕の心を深く動かされた方はありませんでした。松原師は天外氏の著書に ついて、「人に恩人があるように、本にも深い恩を受けた本というものがある。私 は氏の本は恩書だと思う」と言っておられます。石井先生のご本は、僕にとってま さしく恩書です。本当に有難うございました。


◆私からの返事

  三つのご経験を興味深く拝読しました。幼き頃、高熱のなかで、すごいスピード でどこまでも落ちていくなどの幻覚、そういえば私も熱でうなされた幼い日に、ど こまでも落ちてゆく恐ろしい夢を見たことがある、と思い出しました。

   お姉さんのお話、敬虔なクリスチャンだったお姉さんの死の間際の言葉として、 やはり大きな影響を受けたのでしょうね。それから間もなく亡くなられたのでしょ うか。その経験と、戦後にすべてのキリスト教徒が信じられなくなったというお話 とが、何かしら重なりあっているようにも感じました。

   三つ目の経験は、まさしく死に直面した「限界状況」でありましょう。思いがけ なく、手を組んで、すべてを神に委ねる祈りをしたとき、不思議に心が楽になり、 深いところで安心を感じたというは、心のどこかで何かしらの変化が起こったのか も知れません。  この三つ目の経験も、二十七歳の時ということであれば、「臨死なき臨死体験」 より、おそらく二〇年ほど前のことですよね。少なくとも、時間的に直接つながっ た体験ではないと思います。

   にもかかわらず、三つとも「もっとも切実な死の問題」ということで、「光の体 験」の底流になっているのでしょうね。私も、お手紙を拝読したかぎり、そんな感 じがします。いかに時間的に隔たっていようが、また直接的な「限界状況」の只中 にいたわけではないにせよ、心の奥深いところでは、死の問題にぎりぎり対面して いたからこそ、それが「光の体験」につながっていったのだろうと思いました。

   しかし、様々な形で死に直面する人は、限りなく多く存在するわけで、その人た ちすべてが「光の体験」をするわけでもありません。ある夜、床についたときに突 然、「光の体験」に遭遇したという先生のご体験は、その意味で特異です。やはり、 心の奥底で、死から目をそらすのではなく、死と深く出会っていくという準備がで きていたのではないかと思われます。そのきっかけのひとつが、神にすべてを委ね るという祈りと、それに続く安心だったのかも知れません。

   先生は、天外伺朗氏の本に深く影響を受けておられるのですね。私も、天外氏の 本はほとんど読み、影響を受けています。実は、私もマハーサマディ研究会に今年 のはじめだったかに入会しました。といっても、とくに活動に参加したことはあり ません。一度、会報に私の本を紹介していただいたことはありました。

   天外氏のご本が先生の人生観に大きな影響を与え、さらに私の本が、「光の体験」 をその人生観に統合するのに、少しでもお役に立てたのだとすれば、私にとってこ れほどうれしいことはありません。本を世に問うた者として、そのように受止めて くれた読者が一人でもいてくれたことは、何よりも大きな喜びです。「恩書」とは、 少し面映くもったいない言葉ではありますが。  先生のお手紙を読んで、それなら私も読んで見ようと思ってくれた読者は、何人 かいたと思いますし、これからもいると思います。そこからまた、何らかの出会い が広がっていくのだと想像するのも楽しいことです。

   では、長い貴重なお手紙を本当にありがとうございました。残暑が続くなか、先 生にも、どうぞお体を大切にしてください。また、今後とも、何か語っていただく べき点がありましたら、よろしくお願い致します。

03.10・11 掲載


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