臨死体験・気功・瞑想

覚醒・至高体験の事例集  普通の人々の場合-1

R・M・バック

■R・M・バックの「宇宙意識」体験

  アメリカ医学的心理学会の会長でカナダの外科医であったR・M・バック (Dr.Richard M.Bucke)は、その著書『宇宙意識 』(Cosmic Consciousness)の序文で、自分自身の「宇宙意識」の体験について語っています。

  彼は、「宇宙意識」についての調査を行っていた時、自分自身が研究するテーマ である「宇宙意識」を、その研究途上で自ら体験するという稀有な立場にたちまし た。その圧倒的な体験は、彼の考え方をすっかり変えてしまったといいます。 この本でバックは、「宇宙意識」の体験事例を50も示し、それを体系的に分類 し、解釈を施しています。「覚醒・至高体験事例集」でも、この本に紹介された事例からいくつか をおいおい紹介していく予定です。

  その体験は、彼が36歳のときに起こりました。早春の夕べ、二人の友人とともに ワーズワースやシェリーやキーツ、ホイットマンを朗読してすごしました。彼らと深夜に別れ、帰路につきました。彼の心は、詩の朗読や友との語らいによって呼び 覚まされた思いやイメージや感情の影響で、深い静けさと平安に満たされていまし た。彼は、静かで受動的な喜びの状態にありました。

 「気づくと、わたしは炎のような雲に包まれていた。一瞬、火事かと思った。どこ か近くが大火事になっているのかと思ったのだ。ところが、つぎの瞬間、燃えてい るのは自分の内側であることに気づいた。その直後、えもいわれぬ知的な光明を伴 った極度の高揚感、歓喜の絶頂がやってきた。そして、宇宙が死せる物質によって 構成されているのではなく、一つの生ける「存在」であることを知った。単にそう 考えたわけではない。わたしは自らの永遠の生命を自覚した。永遠に生きるという 確信をもったのではなく、自分に永遠の生命があることを自覚したのだ。さらに、人類すべてが不死であることを知った。あらゆる物事が協力しあいながら、互いの ためによかれと思って働いていること、あらゆる世界の根本原理が、いわゆる愛で あること。そして、長期的に見れば、誰もが幸福になることは絶対に確実であるこ と、宇宙の秩序とはそういうものであることを知った。」

  彼は、光明が続いたほんの数秒の間に学んだことは、それ以前の何ヶ月または何年もの研究によって得られたこと以上のものであったといいます。光明そのものは 数秒以上は続きませんでしたが、その影響はぬぐいかたいものでした。その時に見 て知ったことを忘れることなど不可能でした。その時に彼の心に起こったことの真 実性を疑うことも不可能でした。 彼はまた、次のようにも述べています。

 「ふたたび歓喜がやってきた。言語を絶するめくるめく荘厳さに驚嘆したかのよ うに、歓喜のあまり宇宙は静止していた。無限な全宇宙のなかの唯一の存在。愛の みの完璧な存在‥‥‥天上の至福ともいうべきそのすばらしい瞬間に光明が訪れた。 内へと向かう強烈なヴィジョンとともに、宇宙を構成する原子や分子が――それが 物質的なものか、あるいは精神的なものか、わたしにはわからない――自らを再統 合するのをわたしは見た。コスモスが(不絶の果てなき生命のうちに)秩序から秩 序へと移るにつれて再統合したのである。その鎖には何の欠落もなく――一つの輪さえ取り残されはしなかった――すべてのものがしかるべき場所と時間におかれて いるのを見たときの、このうえない喜び。あらゆる世界、あらゆるシステムが一つ の調和した全体に溶け込んでいた。」  

  トランスパーソナル心理学の代表的な理論家、ケン・ウィルバーは、その著『無境界―自己成長のセラピー論 』(平河出版社、1986年)を、R・M・バックのこの体験の引用から始めてい ます。それは、何の前触れもなく理由もなく、突然やってきますが、こうした体験 を、はやまって幻覚や精神異常の産物としてはなるまいと、忠告します。そこには、精神の異常からくる幻覚につきものの自虐的な苦悶はないからです。

   ウィリアム・ジェームズが言うように「われわれの日常のめざめた意識、意識の特殊な一タイプにすぎ」ず、「日常的意識の周辺にはきわめて薄いスクリーンに隔 てられて、それとはまったく異なる意識形態が潜んでいる」のでしょうか。

   ウィルバー自身は、日常的自覚を「あまり意味のない一つの島」にたとえています。この島の周囲は、いまだ地図もない想像を絶する意識の大洋に囲まれています。 「日常的自覚を大洋から隔てる珊瑚礁には、絶え間なく波が打ち寄せる。とことが、 突如として、珊瑚礁を越えた波が、広大な未踏の真の領域、意識の新世界での知識 で自覚の島を洪水にするのである。」

   こうした体験のもっとも深く素晴らしい側面は、私たちが、全宇宙ないし世界と 基本的に一つであると感じること(ワンネスの体験)です。「自己」という感覚が、 心身というせまい範囲をはるかに超えて拡大し、全コスモスを抱擁するのです。そ の意識状態をR・M・バックは「宇宙意識」と呼んだのです。


参考文献》
☆Richard Bucke. Cosmic Consciousness.  Innes & Sonns, Philadelphia, 1905
☆ケン・ウィルバー、『無境界―自己成長のセラピー論 』(平河出版社、1986年)
☆R・A・ギルバート、『神秘主義―心をひらく秘密の鍵 (聖なる知恵入門シリーズ) 』(河出書房新社、1996年)

※「 」により引用したバックの体験部分は、『無境界』における吉福伸逸氏の訳を 用いたことをお断りします。


 03/6/28追加

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