臨死体験・気功・瞑想 

覚醒・至高体験の事例集

K・Nさん(Tグループでの体験)

 以下は、心理学者・水島恵一氏の『人間性心理学大系 第6巻 (6) ・意識の深層と超越』より抜粋した、ある女性の手記である。この女性がTグループに参加した時の体験を綴ったものである。


 特殊な訓練場面では、自己開示に伴って自己超越的体験が得られやすい。たとえばTグループは合宿で山の中などで行われることが多いが、感受性が豊かになっている目にはとりわけ自然の深い情緒が感じられ、そこにえてして人生の本質とでもいえるような何ものかが感じとられてくる。それは日常の自己執着や目先の目的に縛られた心を解放し、人間性の細かなひだを感じさせつつ、同時に大きな世界の流れに目を向けさせてくれる。

 たとえばある女性は、合宿Tグループの合間に、ある山頂で体験した、天地自然の中に融合した姿を、そしてその結果として訪れた「爽やかな生の味覚」を、「胸の奥で疼いた生命感」を、次のように表現している。

「荒涼とした岩肌の一つひとつの刻みから、私は、“二千年も三千年もの歳月、果てしない時間の流れと、ここに、こうして太古から在る自然と、今、ここに立つ私の存在”を厳然たる事実として示していることに気づいたのでした――。

 ――そうです。これまで、私が感じていたものを、異様としか表現できなかった感じが、“時間と存在”と、やっとここで明確になったのです。」 

  「今まさに、ここに立っ私、大地をふんで立つ私、この脚の下の大地の果てしない広がりのなかに立つ私……と自分もまた、シーンと立っている姿を発見し、次の瞬間には、見上げる空の澄んだ青さに、天地、宇宙を感じ……。

 そして次の瞬間、
  ――天と地の間に、たったひとり……私――。 

 ここまで、明確に意識化されたとき、突如として先刻の"時間と存在"がピタリとつながり、その瞬間に、何千年もの間、この世に生まれそして死んでいった幾千万の人たちが、山頂を吹いている風にのって、陽の光を伴って、滔々と大河の流れのように天空に弧を描いて、ヒソッとしゃがんでいるカウンセラーの姿に、吸いこまれるように重なったのでした。」

 このとき一人のカウンセラーが、彼女のそばで無心に写真をとる姿に、彼女はなぜかひどくひきつけられる。

「ちょうどそのとき、カメラのシャッターを押す音が、私の耳にはいってきました。その音が刺激になったのでしょうか。私の体の中には、ことぱにならない感情の波が、怒濤のように押しよせてくるのでした。そしてその感情の波は、腹の底を突きあげ、突きあげ、私を慟哭させてしまったのです。」

「慟哭のあと――
  さわやかな体がのこりました。さわやかな感覚が全身にひろがっていく中で、私は、『ああ、今、生きているのだ!』と思ったのです。この、爽快な“生”が意識化された瞬間、名状しがたい何かが、一条の直線になって背中を走り抜けていきました。」

「背中を走り抜けた、名状しがたいこの何かは、先刻の腹の底を突きあげ、突きあげやってきたエネルギーと同種のものだ……と、とっさに私は思い、このエネルギーに私のダイナミックな生命のエネルギーを瞬間に感じと っていたのでした。そして次の瞬間には、脚下に、大地の果てしない広がりを感じつつ、しかも、天地自然の中の、“今ここに在る私”を感じたあの瞬間の、あの胸の疼き、あの地の底から響いてくるような静かな疼きが甦り、私は、この静かな疼きもまた、私の生命のエネルギーと、その瞬間、明確に意識化することができたのであります。」

「カウンセラーの姿、山頂を吹いている風、陽の光、空の澄んだ青さ、翡翠色の水の面、岩肌、山なみ、大地等、私の五感に訴えるすべてが、私の胸の中に飛びこんできては、一つ、一つ、私の心の鉦を打ち鳴らし、打ち鳴らし、鳴らしつづけていった……そして、刻々の私の全心身は、一つの共鳴板になったように、宇宙・自然・万物に呼応しては、全心身が反響していた……。そんな気がいたします。」(中村喜久子「いつでも、どこでも」)

 以上はピーク体験(至高体験)の一種と解され、日常的自我の枠から解放され、自己の内外に開かれた経験だといえる。そこで本人は、手放しで、ただ、まかせていた。その結果、瞬間瞬間、自分を取り囲むすぺてのものが、飛びこんできていたといえる状況になっていたのであろう。そんな状況の中で、本人はいつの間にか自然の中に深く沈潜していったことによって、さらに深く、すぺてのものに結びついていった。そして人間の本当の姿、といいたくなるような“たったひとり……”を経験したのではないかと思われる。

 しかもその「たったひとり」は、(中略)「大いなる自己」にっながっていることが示唆される。


 Tグループとは、もともとはアメリカの心理学者、クルト・レヴィンが開発した人間関係訓練のためのグループ技法を指す。
  1960年代からアメリカでは、正常者のよりいっそうの自己実現を援助する集中的グループ経験という方法が発展した。その中には、Tグループ、感受性訓練、感覚覚醒訓練グループ、その他さまざまな名称をもったグループ経験がある。
 クライアント中心療法のロジャーズが、対人関係訓練を課題としているTグループに、クライアント中心のアプローチを統合して発展させたものにエンカウンター・グループがあり、これがもっともポピュラーとなった。
 ここに掲載する女性の手記はもともと、全日本カウンセリング関係団体連絡協議会発行の雑誌『カウンセリング』(Vol.2-1,1970)に掲載されたものであり、 ロジャーズ派のエンカウンター・グループの色彩が強いものであろうと推測される。
 エンカウンター・グループは、普通、10〜15人ぐらいのメンバーとファシリテーター(促進者、カウンセラーが担当する場合が多い)で一グループが構成される。合宿等で長時間 、一人ひとりが対等の人間として心を拓き、率直に語りあう。職業、地位、年齢、性別など、異質性を多くもったグループの日常的な「仮面」と取り去った「いま・ここ」での相互作用は、自分でも今まで気づかなかった自己にめざめ、他者の真実に触れる機会となる。
 その結果、他者への信頼感、自己への気づき、自己の統合、開かれた対人関係、前向きの生活態度など、心理的に大きな変化を引き起こすことが見られる。場合によっては、ここに紹介した女性のような劇的な変化を引き起こす場合もあるようだ。
 なお筆者(Noboru)も、 カウンセリングの学習の過程で、こうしたグループに積極的に参加し、自分なりに大きな収穫を得た経験をもつ。

  01/3/5 追加

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