覚醒・至高体験の事例集  あえて分類せずの場合

 

エリザベス・キュブラー=ロス

 エリザベス・キュブラー=ロスは、死や死に至るプロセスの問題、あるいは終末期の医療について、世界の指導的な立場にある人である。彼女は、死を間近にした多くの患者に接する中で、そういう人々の意識の変化や死を受容するプロセスに初めて本格的な光を当てた。その著『死ぬ瞬間―死とその過程について (中公文庫) 』は、世界的ベストセラーとなり、その影響で多くの研究者が、死に臨んだ人々の意識の変化に関心をもつようになった。

 彼女はまた、終末期の患者と接するうちに多数の臨死体験者とも出会うことになった。彼女自身のことばによれば、その数は二万件をこえているという。彼女が書いた本の一部や講演記録の中には、彼女が接したかずかずの臨死体験者たちの体験談がちりばめられており、それによって多くの人々が臨死体験の存在を知ることとなった。


 エリザベス・キュブラー=ロスは、ある研究プロジェクトの被験者として実験室で医学的な手段によって人工的に体外離脱体験をしたという。彼女はその実験で小部屋のウォーターベッドの上に横たわり、しばらくするとすでに空中をふわふわ浮いていた。実験主任の心配をよそに、彼女は自分で自分を誘導し上へ上へと信じられないようなスピードで上昇した。可能なかぎり遠くまできたと思ったところで彼女の記憶は途絶えた。

 この世の肉体にもどったとき、覚えていたのは「シャンティー・ニラヤ」という言葉だけであった。後に彼女は、その言葉がサンスクリット語で「平和の終の住処」という意味であることを知る。ともあれ実験を終えた彼女は、山の中のゲストハウスに一人で泊まった。そしてその晩、体外離脱の時に遠くへ行き過ぎた埋め合わせをすることになるのではという予感通り、「それまでに接した千人の患者の千の死」を体験したという。その無上の苦しみを味わい、それに耐え続けていたときに彼女は、はっと気づく。「闘いをやめ、反抗するのをやめ、ただ平和におだやかに身をまかせさえすればいいのだ」と。その瞬間に痛みは止まり、そして今度は「再生」を経験したという。

 

 私の見るものすべてがふるえていました。天井、壁、床、家具、ベッド、窓、そして窓の外の地平線も振動していました。ついには地球全体が、ものすごいスピードで振動しはじめました。分子の一つひとつが振動し、同時に、蓮の花のつぼみみたいな ものが眼前にあらわれ、何とも美しい色の花が咲きました。そしてその花の後ろに、患者たちがよく話していた光が見えました。私は猛スピードで振動する世界のなかを、開いた蓮の花を通って、その光に近づき、信じられないような無条件の愛のなかに溶け込んでいき、ついにはその光と一体になりました。そして、その光源を一体化した瞬間、いっさいの瞬間が止まりました。深い静寂がおどずれ、私は催眠状態のような深い眠りに落ちました。

 一時間半ほどして、私は目覚め、服を着てサンダルをはき、山を下り、おそらく人間がこの地上で体験できる最高の陶酔感を味わいました。私は、私を取り巻いている世界に対する愛と畏怖に満たされていました。私は一枚一枚の葉に、一つの雲に、一本一本の草に、一匹一匹の虫に、恋していました。未知の小石たちが脈打っているのが感じられました。私は、まぎれもなく小石の少し上を歩きながら、小石たち「踏んだりしませんよ。あなたたちを傷つけたりしませんよ」と話しかけていました。

 山の下までおりてきたとき、自分が地面に触れずに歩いてきたことに気づきました。でも、私の経験が本物であることは疑いありませんでした。ただ、生きているものすべての内には生命が脈動している、という宇宙意識や宇宙的な愛は、言葉では言い表せないのです。


《引用・参考文献》
キュブラー=ロス,E 『「死ぬ瞬間」と臨死体験 』読売新聞社、1997年。
キュブラー=ロス,E 『死後の真実 』日本教文社、1995年。

《関連リンク》
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