2009年に全線開業する隣国の「空港アクセス鉄道」

 

かまにし  2006年 8月3日

 

 

 日本において「空港アクセス」というと、10年ぐらい前までは「遠くて不便」という評判が絶えなかったのが実態である。しかし、羽田空港へのアクセスについては1998年の京急空港線の空港ターミナルビルへの乗り入れをきっかけにモノレールと京急の競争が激化し、現在では浜松町からモノレールで18分・品川から京急で15分、という時間でアクセスできるようになった。一方、成田空港についても2010年の開業を目標に「成田新高速鉄道」が建設されており、完成後には日暮里〜空港第2ビルの間を36分で結ぶことになる。

 隣国の韓国においても空港アクセスは日本と同様、決して便利な状況ではない。特に国内線が中心の金浦空港については、ソウル都心からわずか約20kmという距離にも関わらず、地下鉄・バスいずれの交通手段を使ってもソウル都心までは30〜40分の時間を要する。これは同じく国内線が中心の羽田空港が、東京都心から約20kmという距離をモノレールが18分で結んでいることを考えれば、大きく差をつけている。また、国際線が中心の仁川空港で見るとソウル都心から70分程度であり、同じく国際線が中心の成田空港に東京都心から60分程度かかることを考えると、やはり差をつけていると言える。

 とはいえ、現時点で大きく差をつけている都心からの空港アクセスも、あと数年で劇的に変化することになる。2009年にソウル駅〜金浦空港〜仁川空港を結ぶ「空港鉄道“IREX”」が全線開業するためである。

 この「空港鉄道“IREX”」は2段階で整備されており、来年2007年には第1期区間の金浦空港〜仁川空港間が開通し、2009年に残りのソウル駅〜金浦空港間が開通し、全線開通時にはソウル駅〜金浦空港を15分、ソウル駅〜仁川空港を40分で結ぶ予定である。





 さらに、この「空港鉄道“IREX”」の建設に並行して、現在ソウルでは地下鉄9号線(金浦空港〜江南地区)の建設が進められており、2008年12月の開業を予定している。この地下鉄9号線は韓国では初の本格的な急行運転が導入される予定となっており、完成後には国会議事堂やKBS(日本のNHKに該当する公営放送)のあるヨイドから金浦空港が急行で15分、全国の主要都市を結ぶ高速バスの一大ターミナルである高速バスターミナルまで25分で結ばれることになる。したがって数年後には、ソウルの副都心であり高級住宅街でもある江南地区からの空港アクセスも大きく改善されることになる。地下鉄9号線については、「ソウル市メトロ9号線株式会社」のホームページに以下のように記載されている。

急行列車導入…江南〜金浦空港 30分
汝矣島(ヨイド)〜高速バスターミナル10分、汝矣島(ヨイド)〜仁川空港は40分で

 「地下鉄に乗って、金浦空港から江南(カンナム)駅三(ヨクサム)洞まで 27分」。ソウル地下鉄3期時代を開く地下鉄 9号線(金浦空港〜オリンピック公園)が国内地下鉄の中で初の急行列車体系を取り入れる。急行列車に乗る乗客はソウル江南圏から30分以内で金浦空港まで到逹することができ、漢江以南の交通に大きな変化をもたらすことになる。

 これと共に、すべての地下鉄駅にスクリーンドア、障害者用サインシステムなど各種先端設備が導入される。15日、ソウル市地下鉄建設本部によると2001年末に工事が始まった地下鉄9号線は工事進捗率が40%に迫っており、先行開業の金浦空港〜駅三洞大韓教育保険タワー十字路区間が徐々に姿を現しつつある。

 第二段階での開業となる大韓教育保険タワー十字路〜バンイ洞区間も近いうちに着工する。9号線の一日の予想輸送人員は 78万人に達すると予測されており、2008年 12月完成される。

◆急行列車、初の導入
 ソウル地下鉄9号線の25駅中、急行列車が停車する駅は全部で9駅となる計画である。 急行列車は地下鉄の一部の駅にだけ停まるシステムとして運営される。第二段階の工事が完了すれば、急行列車の停まる駅はさらに増える見込みである。
 急行列車に乗れば、金浦空港から駅三洞まで27分、汝矣島駅から高速ターミナル駅まで 10分かからない。すべての地下鉄駅に停まる緩行列車も42分で、地下鉄 9号線全線を走破する。特に 2007年に仁川空港鉄道が完工されれば金浦空港駅を経由して、汝矣島から仁川空港まで40分で到達することができるようになる。

◆障害者用サインシステム設置
 地下鉄を利用する障害者の不便さを無くすための案内システムが、今年末に開発され、地下鉄 9号線に適用される。
 サインシステムは、障害者たちが家や地下鉄駅などから、地下鉄乗換駅や利用駅の昇降便宜施設(エスカレーター・エレベーター)、トイレなどをあらかじめ確認することができるものだ。例えば金浦空港駅でエレベーターを利用しようとすれば何号車で降りるのが一番便利なのか、また何番出口で障害者用昇降機を利用することができるかなどを知らせてくれる。
 地下鉄建設本部は、ソウル市立大都市科学研究院に研究を依頼したサインシステムが今年の年末に開発されれば、インターネットなどを活用した施設利用案内体系マニュアルを提示する計画だ。

◆汝矣島(ヨイド)トンネル区間でシールド工法適用
 地下鉄9号線の汝矣島(ヨイド)地下通過区間は、砂利と砂で構成された軟弱地盤であるため、地下掘削と同時にコンクリート切断を続けて行い、トンネルを作る「シールド工法」が適用されている。
 シールド工法は掘削直径 7.8mの超大型シールドマシンを利用して、地下をくぐって一日に 8mずつトンネルを完成して行く最先端の工事手法。ソウル市は去年 11月日本で製作・輸入したシールドマシンを現場に投入して工事中である。
 地下鉄建設本部関係者は「永登浦から国会議事堂を経て、汝矣島十字路につながる 3616mの汝矣島区間は 2007年 5月末完工予定」としており、「シールドマシン稼動による騷音被害を減らすために、防音施設まで設置して工事を進行中」と言った。

◆9号線すべての歴史にスクリーンドア設置
 スクリーンドア(日本でいうホームドア)は地下鉄線路と乗り場の間に壁のように設置され、平時には閉まっているが、電車が停まれば電車門戸と同時に開閉される施設である。
 地下鉄乗り場墜落事故を防止することができる施設で、ソウルの場合、地下鉄 2号線の 11駅に設置され、加えて現在も設置工事を進行中である。2008年末に開通する地下鉄9号線のすべての乗り場にも、墜落など事故をあらかじめ防止することができる閉鎖型スクリーンドアが設置される。




 以上のように、ソウルの空港アクセスは間もなく大きな変貌を遂げようとしている。一方で鉄道アクセスもさることながら、韓国で現在、大きな注目を浴びている公共交通機関はBRT(Bus Rapid Transit)である。次回は、この韓国におけるBRT整備計画について紹介したい。

(出所)空港鉄道(株)ホームページ http://www.irex.or.krより
    「ソウルメトロ9」ホームページ http://www.metro9.co.krより

 

 

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