「向こう傷の先に」 ハイトップ High Top


薫り高きヨーロピアン・ニックス

 現代、ダンテ Dante 直系のほとんどが一流半の短距離血統となった中で、間接的ながらも、欧州のクラシックに抜群の適性を見せるのが、ハイトップ High Top とその仔トップヴィル Top Ville の系統です。

 1999年のモンジュー Montjeu(母父 Top Ville)アイランドサンズ Island Sands(父の母父 High Top)らによる活躍に続き、2000年のクラシック戦線でもまた、この血が大きな役割を果たしました。
 英愛の両ダービーを制したのは、アガ・カーン四世のシンダール Sinndar(祖母父 Top Ville)。一方、無敗のまま独ダービーを圧勝したのはザムーン Samum(母父*オールドヴィックの母は High Top の全妹)でした。同様に、牝馬ではエジプトバンド Egyptband(母父 Top Ville)が仏オークスを勝ち、マイルでも、バチール Bachir(父の母父 High Top)が史上初の仏愛2000ギニー連覇を果たしています。
 その後、秋の凱旋門賞でも、これらの馬が堂々主役を務めたのはご存知の通りです。結果は2番人気の Sinndar が勝ち、Egyptband が2着。三強のうち Montjeu と Samum が敗れる形となりました。
 これらの血統中に、必ずといっていいほど High Top の血と併せてノーザンダンサー Northern Dancer が入っていることは、特筆に値します。
 Northern Dancer の核である Nearctic を、Derring-Do 内の Darius、Owen Tudor、Nearly などで支えつつ、*ヴィミーからスタミナ、Madrilene からスピードを引き入れるこの組み合わせは、もはや現代ヨーロッパにおける最も基本的なニックスのひとつだと言えるでしょう。例を挙げれば…。

〜 Northern Dancer 内包 x High Top 内包によるニックス例 44 〜
馬名生年ND位置HT位置主な勝ち鞍
Greinton1981 3代父母父サンタアニタH/米G1、ハリウッドGC/米G1 他
*オールドヴィック
Old Vic
1986 祖父(母)仏・愛ダービー/G1、チェスターヴァーズ/英G3 他
Belmez1987 祖父母祖父キングジョージVI世&クイーンエリザベスS/英G1 他
In the Groove1987 祖父母父愛1000ギニー/愛G1、チャンピオンS/英G1 他
Whitehaven1987 母父祖父ポモーヌ賞/仏G2
Caerlina1988 3代父母祖父仏オークス/仏G1、ノネット賞/仏G3
*オペラハウス
Opera House
1988 祖父母父「キングジョージ」/英G1、コロネーションC/英G1 他
*シンコウラブリイ1989 3代父祖母父マイルCS/日G1、NZT4歳S/日G2、毎日王冠/日G2 他
Takarouna1990 3代父母父プリティポリーS/愛G2
Pernilla1990 祖父母父コンコルドS/愛G3
Turtle Island1991 祖父母父愛2000ギニー/愛G1、フィーニクスS/愛G1 他
Owington1991 3代父母父ジュライC/英G1、モエト&シャンドンレンネン/独G2 他
Winged Love1992 3代父母祖父愛ダービー/愛G1、仏ダービー-3着
Classic Cliche1992 3代父母父英セントレジャー/英G1、アスコットGC/英G1 他
*タイキマーシャル1992 3代父祖母父エプソムC/日G3
Tamure1992 祖父祖母父プランスドランジュ賞/仏G3、英ダービー-2着
Desert Style1992 3代父母父テトラークS/愛G3 バリコーラスS/愛G3 他
My Emma1993 4代父母父ヨークシャーオークス/英G1、ヴェルメイユ賞/仏G1
Darazari1993 祖父母祖父ランヴェットS/豪G1、モーリスドニュイユ賞/仏G2 他
*ツクバシンフォニー1994 3代父母祖父エプソムC/日G3、NHKマイルC/日G1-2着
*ダイワカーリアン1994 3代父母祖父札幌記念/日G2、東京新聞杯/日G3、富士S/日G3
Kayf Tara1994 祖父母父愛セントレジャー/愛G1(2回)、アスコットGC/英G1(2回) 他
Tomba1994 母祖父父母父フォレ賞/仏G1、コーク&オラリーS/英G2 他
San Sebastian1994セン 3代父母父カドラン賞/仏G1、同-2着、同-3着
Uruk1994 母祖父父母父ウンブリア賞/伊G3
Lend a Hand1995 3代父祖母父伊グランクリテリウム/伊G1、英2000ギニー-2着 他
Sea Wave1995 祖父祖母父グレイトヴォルティジュールS/英G2
Impressionist1995 3代父母祖父フューチュリティS/愛G3、デューハーストS/英G1-3着
Kincara Palace1995 祖父母父キラヴーランS/愛G3
Gulland1995 祖父母父チェスターヴァーズ/英G3
Tadwiga1995 祖父(3代母)メイトロンS/愛G3
Montjeu1996 祖父母祖父仏・愛ダービー/G1、凱旋門賞/仏G1、「Kジョージ」/英G1 他
Timboroa1996 3代父祖母父共和国大統領賞/伊G1
Mother of Pearl1996 祖父母父サンロマン賞/仏G3
Banyumanik1996 3代父母祖父ドルトムントヴィルトシャフト大賞/独G3
Noushkey1996 3代父母父ランカシャーオークス/英G3、英オークス-2着
Northern Town1996 3代父+母祖父リュテス賞/仏G3
Pipalong1996 母3代父祖父母父スプリントC/英G1、パレスハウスS/英G3 他
Sinndar1997 4代父祖母祖父英・愛ダービー/G1、凱旋門賞/仏G1、愛ナショナルS/愛G1 他
Bachir1997 母祖父+父母父仏・愛2000ギニー/G1、リッチモンドS/英G2
Egyptband1997 祖父+母祖父仏オークス/仏G1、凱旋門賞-2着 他
Glyndbourne1997 祖父母父ガリニュールS/愛G3、愛ダービー-2着
Folie Danse1997 3代父母3代父ミネルヴ賞/仏G3
Three Point1997 父母祖父+曾祖母父モートリー賞/仏G3
※ Northern Dancer 位置の太字(9頭)は Sadler's Wells 経由であることを、+付き(4頭)は他の NDすなわちNDクロスの存在を、
また High Top 位置の太字(14頭)は Top Ville 経由であることを、括弧(2頭)はHTの全妹 Cockade による代替であることを、
そして茶字斜体 (27頭)はX染色体径路(=伴性血縁)上にあることを、それぞれ示す。

 これらの中で最も純粋な形のニックを示し、後に数々の応用例の手本となったのが、High Top の全妹から産まれたチャンピオンホース、*オールドヴィック Old Vic でした。当馬の配合は、9代表で観察するだけの価値があります。

*オールドヴィック Old Vic 1986 牡 鹿 / FNo. 11-a / Sadler's Wells 系
Sadler's Wells
1981 鹿
Northern Dancer
1961 鹿
Nearctic
1954 黒鹿
Nearco
1935 黒鹿
Pharos Phalaris
Nogara Havresac
Lady Angela
1944
Hyperion Gainsborough
Sister Sarah Abbots Trace
Natalma
1957 鹿
Native Dancer
1950
Polynesian Unbreakable
Geisha Discovery
Almahmoud
1947
Mahmoud Blenheim
Arbitrator Peace Chance
Fairy Bridge
1975 鹿
Bold Reason
1968 鹿
Hail to Reason
1958 黒鹿
Turn-to Royal Charger
Nothirdchance Blue Swords
Lalun
1952 鹿
Djeddah Djebel
Be Faithful Bimelech
Special
1969 鹿
Forli
1963
Aristophanes Hyperion
Trevisa Advocate
Thong
1964 鹿
Nantallah Nasrullah
Rough Shod Gold Bridge
Cockade
1973 鹿
(= High Top
1969 黒鹿
Derring-Do
1961 鹿
Darius
1951 鹿
Dante
1942 黒鹿
Nearco Pharos
Rosy Legend Dark Legend
Yasna
1936 鹿
Dastur Solario
Ariadne Arion
Sipsey Bridge
1954 黒鹿
Abernant
1946
Owen Tudor Hyperion
Rustom Mahal Rustom Pasha
Claudette
1949 黒鹿
Chanteur Chateau Bouscaut
Nearly Nearco
Camenae
1961 鹿
*ヴィミー
Vimy
1952 鹿
Wild Risk
1940 鹿
Rialto Rabelais
Wild Violet Blandford
Mimi
1943 鹿
Black Devil Sir Gallahad
Mignon Epinard
Madrilene
1951
Court Martial
1942
Fair Trial Fairway
Instantaneous Hurry On
Marmite
1935
Mr. Jinks Tetratema
Gentlemen's Relish He
SireLine for Windows Ver1.50 - Build 547 / 9代クロス血統表はこちら

 当馬は3歳(明け4歳)時、10ハロンのクラシックトライアル、12ハロンのチェスターヴァーズに仏・愛の両ダービーまでを逃げ切りで制し、インターナショナルクラシフィケーションでは欧州トップタイの134を獲得(名マイラー・ジルザル Zilzal と等しく、ナシュワン Nashwan を3ポンド上回る)。翌年も「キングジョージ」をベルメス Belmez の首差2着するなど、2400mを逃げ切ってバテない馬でした。彼やそのライヴァル Belmez の姿に象徴されるように、Northern Dancer と High Top のニックは多くの場合、豊かなスタミナを裏付けるものとされています。
 特に、*オールドヴィックの3年後、同じ Sadler's Wells の産駒で今度は母父に High Top を配した
*オペラハウス Opera House が、これまた大活躍、このニックを印象付けました。
 冒頭の表に見るように、High Top とニックを持つND直仔は、Sadler's Wells に限られているわけではありません。しかし「リーディングサイアーと相性が良い」上に「よりリーズナブルな類似品とでも相性は良いまま」だったことで、現実にこのニックは大成功を収めているのです。その仕組みは、生産者の立場を想像してみればすぐに理解できるでしょう。
 日本でも、母父からスピードを注入した*シンコウラブリイこそマイラーに出ましたが、7歳になって逃げ切りで重賞2勝を挙げた*ダイワカーリアンには、このニックらしさがよく表れています。

 …ところが、こうした実績から想像される姿とは裏腹に、現役時代の High Top は、どちらかと言えば「仕上がり早のマイラータイプ」として扱われていました。


霧満てる朝に目覚め

 High Top を生産したのは、イギリスの元アマチュア障害騎手、ボブ・マクレーリー Robert J. McCreery という人物。彼は騎手として2度のチャンピオンに輝いた末、アスター卿やホイットニー家から繁殖牝馬を譲り受け、生産を始めました。
 後にはドミニオン Dominion や自家生産所有馬エレクトリック Electric(1979 牡 鹿 by Blakeney ― ジョッキークラブS、グレイトヴォルティジュールS 他 重賞4勝。*シャレーの半弟)などを手がけ、種牡馬ビジネスエージェントとして知られるようになる彼も、60年代の内は苦しい試行錯誤を続けていたと言います。
 そんな時、マクレーリーのもとに舞い込んだ一通の報せは、彼を狂喜させました。ヨーロッパ随一の規模と格式で知られる、ハイフライヤー・セール(現タタソールズ・ホウトン・セール)が、自分の生産馬2頭―― Derring-Do の牡駒と Le Levanstell の牝駒――を取り扱ってくれる、というのです。
 これら2頭のうち、後者は競馬史の流れとともに忘れ去られ、その姿を追うことままなりませんが、前者(すなわち後の High Top)については、これでなかなか地味な血統馬だったと想像できます。

High Top 1969 牡 黒鹿 / FNo. 11-a / Dante 系
Derring-Do
1961 鹿
Darius
1951 鹿
Dante
1942 黒鹿
Nearco
1935 黒鹿
Pharos Phalaris
Nogara Havresac
Rosy Legend
1931 黒鹿
Dark Legend Dark Ronald
Rosy Cheeks St. Just
Yasna
1936 鹿
Dastur
1929 鹿
Solario Gainsborough
Friar's Daughter Friar Marcus
Ariadne
1922 鹿
Arion Valens
Security Simon Square
Sipsey Bridge
1954 黒鹿
Abernant
1946
Owen Tudor
1938 黒鹿
Hyperion Gainsborough
Mary Tudor Pharos
Rustom Mahal
1934
Rustom Pasha Son-in-Law
Mumtaz Mahal The Tetrarch
Lady Josephine
Claudette
1949 黒鹿
Chanteur
1942 黒鹿
Chateau Bouscaut Kircubbin
La Diva Blue Skies
Nearly
1940 鹿
Nearco Pharos
Lost Soul Solario
Camenae
1961 鹿
*ヴィミー
Vimy
1952 鹿
Wild Risk
1940 鹿
Rialto
1923
Rabelais St. Simon
La Grelee Helicon
Wild Violet
1935 鹿
Blandford Swynford
Wood Violet Ksar
Mimi
1943 鹿
Black Devil
1931 黒鹿
Sir Gallahad Teddy
La Palina Ambassador
Mignon
1935 鹿
Epinard Badajoz
Mammee Bruleur
Madrilene
1951
Court Martial
1942
Fair Trial
1932
Fairway Phalaris
Lady Juror Son-in-Law
Lady Josephine
Instantaneous
1931 鹿
Hurry On Marcovil
Picture Gainsborough
Marmite
1935
Mr. Jinks
1926
Tetratema The Tetrarch
False Piety Lemberg
Gentlemen's
Relish
1926 青鹿
He Santoi
Bonne Bouche Buchan
SireLine for Windows Ver1.50 - Build 547 / 9代クロス血統表はこちら

 当馬の父
デリングドゥ Derring-Do は、同時代一流のマイラーで、中距離まで融通の利く所を見せました。が、繁殖入りしてからは、初年度から快速*ハンターコム Huntercombe(1967 牡 黒鹿 out of Ergina ― ジュライC、ミドルパークS 他)を出すなど、非常にスピードの勝った適性を示すようになります。ただし、決して一流種牡馬との認識があったわけではありません。
 一方母のカメナー Camenae は、かのマントン卿の生産所有馬としてイギリスで走るも、3年目の4歳にしてようやく14ハロンのメイドンを勝っただけ(13戦1勝)の下級馬であり、66年12月、1,500ギニーのバーゲン価格でマクレーリーに購入されました。年代が下れば名繁殖だったことがわかる彼女ですが、初仔ミントフラペ Menthe Frapee(1967 牝 by March Past ― 不出走。のち南米へ輸出)、2番仔ハイルーラー High Ruler(1968 牡 by Sovereign Lord ― 平地で23戦未勝利、障害入りして4勝を挙げる)と、初期の産駒は今ひとつ目立ちませんでした。
 一族についても同様に、しばらく経てば(後述するような)活躍馬が出るものの、この時点では、従兄弟にテューダーミュージック Tudor Music(1966 牡 by Tudor Melody ― ジュライC/英、スプリントC/英、リッチモンドS/英、ジムクラックS/英、コーク&オラリーS/英 他、スプリント戦で14勝)がいたくらい。
 したがってマクレーリーの狙いとしては、まず間違いなく Tudor Melody に類似でより安価な種牡馬を求めた結果、Derring-Do を種付けしたものと考えられます。両種牡馬の類似ぶりは、別項〈ニックスインブリード〉の推奨例としてご紹介した通り。もし Camenae に Tudor Melody を種付けしていれば、(もう少し短距離向きだった可能性はあるとしても)きっとよく似た産駒が生まれていたでしょう。

 実際、9代表を見ても、High Top の配合にはすぐれたバランス感覚が認められます。
 ここでは、父の Nearco & Solario の組み合わせクロスを Pharos=Fairway:5*6*6x5Gainsborough:6*6*7x6 と一旦切り下げた上で、Son-in-Law:6x6 〜 Dark Ronald:6*7x7*7 という重さと、Lady Josephine:6x6 〜 Sundridge:7*7*8x7*8 あるいは The Tetrarch:6x6 といった鋭さが、しっかり練り込まれています。一見異系的な*ヴィミーにも Dark Ronald が入っている所はオイシイですし、Madrilene(4戦2勝)のスピードを、ほとんど相似な Abernant を用いて余さず引き出している辺りも見事なお手並み。常染色体的には、類似のカブラヤオーよりもずっと洗練された血統構成だと言えます。
 …おやおや、例によって妄想が過ぎたようです。1歳時の彼へ目を戻しましょう。
 マクレーリーにとっては生憎なことに、セールは皮肉な結果となりました。High Top らが上場された競り初日の朝一番は、ニューマーケットに濃霧が立ち込めており、おかげでほとんどの購買者は競りに遅刻してしまったのです。ろくに値のつけられないまま「主取り」に終わった生産馬を連れ、マクレーリーはとぼとぼとリングを後にしました。
 そこへ、現地の調教師ベルナール・ファン・カッツェン Bernard van Cutsem と、そのパトロンジュールズ・ソーン卿 Sir Jules Thorn が遅れて到着します。マクレーリーは半ば自棄ッぱち気分で、彼らに Derring-Do 牡駒を9,000ギニー、Le Levanstell 牝駒を12,000ギニーの値段で売り掛けました。即金払いと聞いて、ソーン卿ははじめ乗り気でありませんでしたが、マクレーリーが自分も50%分担するとまで言うと、態度を変えます。
 あるいは実際は、ソーン卿たちも競りの時間内に着いており、買い手の薄い状況を見て、意図的に競り外の有利な取り引きへ持ち込んだということなのかもしれませんが (^^; ともかく晴れてここに売買は成立しました。
 以後は、彼ら調教師と馬主が、High Top と名付けたこの馬を文字通りの高みへと導いてゆくことになります。


汝は野辺を駆け、嵐が丘を越えゆく

 2歳となり、サンダウンの5ハロン戦でデビュー勝ちを飾った High Top は、3週間後ニューベリで開かれたワシントンシンガーSでも、ヤロスラフ Yaroslav(1969 牡 by Santa Claus ― のちロイヤルロッジS/英。半姉に英1000ギニー&英・愛オークス馬にして*マグニテュードの母 Altesse Royale)から半馬身差の2着と健闘します。

 続いて彼はリポンでの6ハロン戦チャンピオントロフィーに出走すると、他の馬を寄せ付けない逃げ切り勝ちをおさめ、意気揚揚とオブザーヴァーゴールドC(現レーシングポストトロフィー)に駒を進めます。ちょうどこの年からグレード制が施行され、このレースはG1に指定されていました。
 ここで High Top に立ちはだかったのは、仏グランクリテリウムを*ハードツービート Hard to Beat の首差2着し、他に負けたことのない強豪、スティールパルス Steel Pulse(1969 牡 by *ダイアトム ― 後の愛ダービー馬)。レースでは、集団を引っ張った High Top に最後 Steel Pulse がみるみる迫り、馬体を併せるかと見えたその時、High Top もぐんと加速して、大きくはないがしかし十分な3/4馬身という差をつけてゴールしました。

 この年のカッツェン厩舎は評判馬ぞろいで、フリーハンデ上位12傑の内に4頭を送り込んだようなのですが、中でも4戦3勝2着1回の High Top には、首位*クラウンドプリンス Crowned Prince(1969 牡 栗 by Raise a Native ― デューハーストS/英、シャンペンS/英。米二冠馬 Majestic Prince の全弟)から2ポンド差の2位タイ(132ポンド)、という高い評価が与えられています。


 翌年、何かと注目される身になった High Top は、サースクでの初戦(8ハロン)を楽勝すると、まず英2000ギニーに向かいます。
 嵐の中で行われたこの第164回英2000ギニーが、High Top にとって生涯最高のレースとなりました。彼は悪天候をものともせず、終始先頭でローリーマイルをやって来ます。直線コースもあと僅かという所で ロベルト Roberto(1969 牡 鹿 by Hail to Reason ― 後の英ダービー、インターナショナルS/英、コロネーションC/英 勝ち馬。種牡馬としてもお馴染み)が馬群を抜け出し襲いかかると、High Top は鞍上ウィリー・カーソン騎手さえ驚くほどの執着を見せて Roberto を振り切り、そのままゴールポスト前を駆け抜けました。

 この勝利は、前年ブリガディアジェラード Brigadier Gerardミルリーフ Mill Reef*マイスワロー My Swallow を破った「世紀の一戦」に比べれば、状況も水準も違うものでした。それでも、High Top の勇壮なレース振りには、多くの賛辞が与えられたと言います。
 そうした評価に対し、カッツェン師らは、多分に自覚的ないし変則的なローテーションを選択してゆきます。ダービーへは見向きもせず、以後の High Top は、ひたすらマイル戦線で頂上を目指すこととなりました。


額の傷も厭わず、偏に至高ならんと

 英2000ギニーの勝利から中1週、High Top はカラへ渡り、ライトタック Right Tack 以来3年ぶり史上2頭目の両ギニー連覇をかけて、愛2000ギニーに挑みます。しかし、さすがに激戦の疲れが残っていたのか、ここではいつもの High Top らしい行き脚が見られぬまま、バリモア Ballymore の7着と、はじめての着外に敗れました。

 およそ2ヶ月の休養を挟んで馬体を立て直した High Top は、次にグローリアス・グッドウッド開催のサセックスSに現れます。敵は同期の快速サラスト Sallust(1969 牡 栗 by Pall Mall ― すでにリッチモンドS/英、ダイオメドS/英を勝っていた)。果たして、激しい叩き合いのままもつれ込んだゴールポスト前では、High Top よりも Sallust が頭差だけ出ていました。

 連敗を喫したとは言え、内容自体は悲観するほどではない、とカッツェン師は考えていたようです。師は High Top を、フランス・ドーヴィルのマイル王決定戦、ジャックルマロワ賞に出走させます。High Top は、フランスの観衆からも多くの支持を集めました。ところが、力走適わず、彼はリファール Lyphard(1969 牡 鹿 by Northern Dancer ― この年ドラール賞/仏、フォレ賞/仏をも制す。これまた後の大種牡馬)の激走の前に、わずか鼻差屈したのでした。
 その Lyphard 自身、春には英・愛ダービーをそれぞれ人気で15着・4着と敗れ、マイルへと路線転換して初めての大レースだったわけで、High Top の「同期の強敵を吸い寄せる性」たるや、ほとんど恨めしいほどです。

 へこたれる暇もあればとて…、秋の大一番、ムーランドロンシャン賞がやってきます。当時このレースは凱旋門賞と同日の開催(この年は10月7日)で、一方のアスコット・クイーンエリザベスII世SはまだG2でした(※ この年は「最強の内弁慶」Brigadier Gerard が連覇する)。したがって、ムーランドロンシャン賞こそ、まさに「欧州マイルの年度総決算」と言うにふさわしい舞台だったのです。
 もちろん、High Top に苦渋を舐めさせた宿敵 Sallust に Lyphard といった連中も出走してきており、ここで逆転すれば、マイルの王座は間違いなく彼のものとなったでしょう。
 しかし、天はついにこの馬に微笑みませんでした。本質的には英2000ギニーのように渋った馬場を好む High Top にとって、この日の馬場は硬すぎたこともあり、彼は Sallust や Lyphard から見れば格好の標的となります。直線で2頭に交わされた挙句、最後の一完歩で3着さえ*ダーリングディスプレイ Daring Display(1969 牡 青鹿 by Bold Lad ― 先年モルニ賞/仏の勝ち馬)に奪われた形で、High Top 最後のレースは終わりました。

 以上から彼の成績は、一般に「オブザーヴァーGC、英2000ギニー、2nd. サセックスS、ジャックルマロワ賞、4th. ムーランドロンシャン賞。通算10戦5勝、2着3回」として記述される所。
 結局、英2000ギニーの後は勝てなかったわけですが、しかし彼が進み出た舞台も、そして敗北の様子でさえも、一流の誇りを決して失わぬものであった点は、改めて見直されてよいでしょう。
 そしてもう一つ、マイル以上を経験することのないまま引退した点は、彼の繁殖成績(後述)を知る我々とすれば、少々残念にも思えます。父の実績と自身の早熟・快速ぶりが、カッツェン師らに「マイラー」イメージを抱かせたのでしょうが、彼の脚質や馬場適性、馬体といったフィジカル面を考えても、先に見た配合の詳細からも、High Top が父とは違う中長距離馬になりえた可能性は、決して小さく見積もれません。


幻想を抜け出でて

 さて、引退した High Top は、翌1973年からダービー卿のウッドランドスタッドで、種牡馬の列に加わりました。種付け料は堂々の8,000ポンド。父 Derring-Do と違って、明らかに力強く骨量豊かな(口さがない人に言わせれば、鈍重なくらいの)タイプであったものの、当初は自身の実績と父系2代のイメージ(先入観)から、依然「早熟マイラー種牡馬」として扱われたようです。

 しかしその割には、2歳から活躍する産駒は少なく、むしろ3歳以降、長距離で活躍する一発大物を出す傾向を見せます(全く例外的なのが、相似交配も鮮やかな Circus Ring
 こうした認識上の齟齬からも、種牡馬 High Top は、量的な意味での活力が抜きん出た存在とはなりえませんでした。実際、彼のポジションは、1981年および84年に英リーディングサイアーランキングの5位に入った程度であり、当時の流行はそれよりもずっと Habitat や High Line、もしくは北米供用の Northern Dancer といった辺りにありました。


  〜 ハイトップ High Top の産駒 (太字は重賞勝ち馬)

アロフト Aloft(1974 牝 out of Over the Water ― プリンセスロイヤルS/英)
トリプルファースト Triple First(1974 牝 out of Field Mouse ― ナッソーS/英、サンチャリオットS/英、メイヒルS/英
   ミュージドラS/英、キャンデラブラS/英)
→ Maysoon、Three Tails、Third Watch、Richard of York
*ロイコン Roycon(1975 牝 鹿 out of Madelon ― リブルスデイルS/英 4着) → Kings River
トップヴィル Top Ville(1976 牡 鹿 out of Sega Ville ― 仏ダービー/仏G1、リュパン賞/仏G1
                                サンロマン賞/仏G3、コンデ賞/仏G3、ギシュ賞/仏G3)= 種牡馬としても成功
エルドレト Eldoret(1976 牝 鹿 out of Bamburi)     → Efisio & Mountain Bear
クリスタルクイーン Crystal Queen(1976 牝 out of Crystal Drop) → Greinton
マイナーズランプ Miners Lamp(1977 牡 鹿 out of Coal Face ― エッティンゲンレンネン/独G3)
ロジアベイ Rosia Bay(1977 牝 鹿 out of Ouija)     → *イブンベイ & Roseate Tern
ハイガイト High Gait(1977 牝 out of Gay Charlotte)   → Royal Gait
カットアバヴ Cut Above(1978 牡 out of Cutle ― 英セントレジャー/英G1、ホワイトローズS/英G3、
                             愛ダービー/愛G1-2着)= 種牡馬としてはアイルランドで不振、のちブラジルへ輸出
ルッキングフォー Looking For(1978 牡 鹿 out of Love You ― ローマ賞/伊G1、ミラノ金杯/伊G3)
スマゲタ Smageta(1979 牝 out of Christine ― クリテリウムフェミニーレ/伊G3)
トップホープ Top Hope(1979 牝 out of Port Ahoy ― ロックフェルS/英)
サーカスリング Circus Ring(1979 牝 out of Bell Song ― ロウザーS/英、プリンセスマーガレットS/英)
マイトップ My Top(1980 牡 鹿 out of Forgotten Dreams ― 伊ダービー/伊G1、フェデリコテシオ賞/伊G2、
                                  エマヌエーレフィリベルト賞/伊G2、伊グランクリテリウム/伊G1-3着)
パインリッジ Pine Ridge(1980 牝 out of Wounded Knee) → In the Groove
サーカスプラム Circus Plume(1981 牝 out of Golden Fez ― 英オークス/英G1、ヨークシャーオークス/英G1、
                             愛オークス/愛G1-2着、ヴェルメイユ賞/仏G1-2着)
→ Scarlet Plume
ケイチュ Kaytu(1981 牡 out of Arawak ― チェスターヴァーズ/英G3)
パト Pato(1982 牝 鹿 out of Patosky)           → Classic Cliche & My Emma
トップオブザリーグ Top of the League(1982 牝 out of Home and Away) → San Sebastian & Noushkey
カラースピン Colorspin(1983 牝 鹿 out of Reprocolor ― 愛オークス/愛G1、ミュージドラS/英G3-3着、
              英オークス/英G1-4着、ヨークシャーオークス/英G1-4着)
*オペラハウス & Kayf Tara
シサニア Sisania(1983 牝 鹿 out of Targos Delight)    → Turtle Island & Mother of Pearl
オールドドゥームズデイブック Old Domesday Book(1983 牝 鹿 out of Broken Record) → Owington
*トップクラス Top Class(1985 牡 鹿 out of Cassina ― ジェフリーフリアーS/英G2、タンクレッド国際S/豪G1-2着、
     キングジョージVI世&クイーンエリザベスDS/英G1-3着)= 中央で11頭出走3頭勝ち上がり、ワンダーサーティの3勝が最高
オルガンツァ Organza(1985 鹿 牝 out of Canton Silk)  → Desert Style
トップイメージ Top Image(1985 牝 out of After Image ― トルコダービー/土)
トップブート Top-Boot(1986 牡 黒鹿 out of Sauce Boat ― カルロポルタ賞/伊G3 2着) = 種牡馬入りしている模様
オールトップ All Top(1988 牡 out of Alaria ― 独セントレジャー/独G2)
ソングラインズ Songlines(1989 牡 out of Aborigine ― ニエユ賞/仏G2、リス賞/仏G3)

 直仔の内、競争成績で一流と呼べる水準を越えたのは、牡馬では6連勝&レコードで仏ダービーを制した Top Ville や、その名の通り大一番であの Sherger をぶっこ抜いた Cut Above、――牝馬では Triple FirstCircus PlumeColorspin といった辺りでしょうか。
 上表の大部分が繁殖牝馬で占められているように、High Top の繁殖的価値は、自身が88年3月に亡くなってから、ブルードメアサイアーの位置に入り始めてようやく明らかになりました。何より、それらは様々な(ただし多くは Northern Dancer の血を含んだ)種牡馬に対して、きょうだい産駒・孫世代といった形で継続的に成果を挙げていったのです。このおかげで、High Top は1990年と93年の二度、英愛のリーディングブルードメアサイアーに輝いています。
 手元のデータベースでは、「High Top 直仔」では107頭中16頭(上表太字馬)が重賞勝ちを果たしているのに対して、「母父 High Top」は実に138頭中29頭が重賞に勝っています。<もちろん、このデータには登録されていない無名馬も多く、数字がそのまま判断材料になるわけではありませんけれど。
 参考文献によれば、直仔のステークス(重賞・リステッドを含む「特別戦」)勝ち馬は合計31頭だとか。もっとも、例えば Looking For の勝ち鞍なんかは資料によって異なるんで、これまた判断に迷う所です。(^^;
 High Top 牝馬の中でも圧巻なのは、競争成績でも一流だった Triple FirstColorspin でしょう。前者は産駒4頭に孫5頭、おまけに早くも(≒ついこないだ)曾孫2頭が重賞を勝って「ブラックタイプで真っ黒」な牝系を築き上げ、後者は*オペラハウスに Kayf Tara とチャンピオン級2頭を輩出しています。
 また、*ロイコンは、直仔こそ Kings River(1982 牡 by Irish River ― グレンカーンS/愛G3)*セサロニアン(1988 牡 栗 Nijinsky ― 札幌記念3着)と一流未満でしたが、*シンコウラブリイの華々しい成功以後、盛んに日本へ輸入されるようになり、*タイキマーシャル*タイキエルドラド*タイキトレジャーなどコンスタントに活躍馬を出して、大樹ファームのドル箱となりました。


先祖帰りの謎

 …字面から血統を追うジヅラーとしちゃ、この点についても少し考察をしておきたい所。

 これほど母父として活躍しているにも関わらず、High Top の母カメナー Camenae を伴性血縁血統表で書いてみると、その母マドリレーヌ Madrilene の伴性血縁上に Isabel(St. Frusquin、St. Gris らの母):4x4 のクロスがあるくらいで、お世辞にも〈ダブルコピー牝馬〉だ、などとは言えません。
 ただし、この Isabel クロスが効いたのか、Madrilene の牝系は各分枝とも揃って優秀である点は、指摘しておくべきでしょう。Camenae の半姉 Fran からはテューダーミュージック Tudor Music、半妹 Petite Marmite からはパウリスタ Paulista が、そしてもちろん Camenae からは High Top とその全弟 Camden Town が、さらにはその全妹 Cockade を通して*オールドヴィック*スプラッシュオブカラー Splash of Colour の半兄弟が、それぞれ出ています。
 風変わりな所では、High Top の半姉 Menthe Frapee が大西洋を越えて輸出され、ペルーのダービー馬ドンラモン Don Ramon の母となり、さらには当地のクラシック馬を多数数える名牝系を築いています。
 このような優秀さには、Derring-Do と Camenae の直接的マッチングを抜きにしても注目すべき価値がありますね。


 牝系図:Madrilene / FNo.11-a

 Madrilene ( 1951 牝 栗 by Court Martial ) ― 4戦2勝   Fran ( 1959 牝 by Acropolis )   |Tudor Music ( 1966 牡 by Tudor Melody ) ― ジュライC/英、スプリントC/英、リッチモンドS/英、   |                  ジムクラックS/英、コーク&オラリーS/英   Camenae ( 1961 牝 鹿 by *ヴィミー ) ― 13戦1勝   |Menthe Frapee ( 1967 牝 by March Past )   ||Don Ramon ( 1978 牡 by Aeropago ) ― セレクシオンデポトリリョスフュチュリティ/ペルーG1、   ||                     ダービーナチオナル/ペルーG1   |High Ruler ( 1968 牡 by *ソヴリンロード ) ― 障害4勝   |High Top ( 1969 牡 黒鹿 by Derring-Do ) ― 英2000ギニー/英G1、オブザーヴァーゴールドC/英G1、   ||                 2nd. サセックスS/英G1、ジャックルマロワ賞/仏G1   |Cockade ( 1973 牝 鹿 by Derring-Do ) ― 5戦1勝   ||Green Lucia ( 1980 牝 栗 by Green Dancer ) ― 2nd. ヨークシャーオークス/英G1   |||Euromill ( 1985 牝 鹿 by Shirley Heights )   ||||Bartok ( 1991 牡 by Fairy King )   ||||Tadwiga ( 1995 牝 鹿 by Fairy King ) ― メイトロンS/愛G3   |||Luchiroverte ( 1988 牡 by Slip Anchor ) ― 2nd. ジョッキークラブS/英G2、   ||||             プリンセスオブウェールズS/英G2、チェスターヴァーズ/英G3   |||Ela-yie-mou ( 1993 牡 by Kris )   ||Turban ( 1985 牝 by Glint of Gold )   |||Barboukh ( 1990 牝 by Night Shift )   ||||Barbola ( 1995 牡 by Diesis ) ― エクスビュリ賞/仏G3、2nd. プランスドランジュ賞/仏G2、   ||||             アルクール賞/仏G3、3rd. 共和国大統領賞/伊G1   |||Tricorne ( 1991 牝 by Green Desert )   |||Lovely Lyca ( 1992 牝 by Night Shift )   |||Papaha ( 1993 牝 by Green Desert )   ||*オールドヴィック Old Vic ( 1986 牡 鹿 by Sadler's Wells ) ― 仏・愛ダービー/G1 他   ||*スプラッシュオブカラー Splash of Colour   ||        ( 1987 牡 栗 by Rainbow Quest ) ― フォワ賞/仏G3、ロイヤルウィップS/愛G3   ||Muthhil ( 1988 牡 by Green Desert )   ||Chapka ( 1990 牝 by Green Desert )   ||Bobinski ( 1992 牡 by Polish Precedent ) ― 3rd. エドゥヴィル賞/仏G3   |Camden Town ( 1975 牡 by Derring-Do ) ― ジャージーS/英G3、2nd. ロッキンジS/英G2、   ||               ウェストベリーS/英G3、3rd. デューハーストS/英G1   |Valois ( 1978 牝 by Lyphard )   ||*マリアガーデン ( 1990 鹿 牝 by Caerleon )   |||アグリッパ ( 1997 鹿 牡 by *トニービン )   |||ボアーズチャージ ( 1998 牝 by サクラバクシンオー )   ||*マロンシークレット ( 1992 鹿 牡 by Machiavellian )   |General Anders ( 1979 牡 by *ハバット )   Petite Marmite ( 1963 牝 黒鹿 by Babur )    Spicy ( 1969 牝 黒鹿 by I Say )    |*ガロト Garoto ( 1978 牡 黒鹿 by Lyphard ) ― 6戦3勝、重賞出る前に引退    Paulista ( 1971 牝 by *シーホーク ) ― ヴェルメイユ賞/仏G1、ノネット賞/仏G3、ミネルヴ賞/仏G3    |Persifleur ( 1984 牡 by *リファーズウイッシュ ) ― グレフュール賞/仏G2    |Pourville ( 1992 牝 by Manila )    Caribo ( 1972 牡 by Sassafras )    Nomadic Pleasure ( 1976 牝 by Habitat )     Trampship ( 1984 牝 by High Line ) ― パークヒルS/英G2     |Vagrancy ( 1989 牝 by *ダンシングブレーヴ )     |Touring ( 1991 牝 by Sadler's Wells )     Cruising Height ( 1987 牝 by Shirley Heights )     |Sea Wedding ( 1993 牝 by *グルームダンサー )     Nomadic Quest ( 1990 牝 by Rainbow Quest )
SireLine for Windows Ver 1.50 - Build 547
 ちなみに、この母系をさらに広く眺めると、ハードソース Hard Sauce(1948 牡 鹿 by Ardan ― ジュライC 他。ミスオンワードや*ハードリドンの父)アカテナンゴ Acatenango(1982 牡 栗 by Surumu ― 独ダービー、バーデン大賞-連覇、サンクルー大賞 他。現代ドイツ最良の種牡馬)なども視野に入ってきます。
 あるいは、High Top のBMSライン上にいる種牡馬ブラックデヴィル Black Devil(1931 黒鹿 by Sir Gallahad ― ドンカスターC)は、直仔がまったく振るわなかったのに、母父としては

フーデュディアブル Feu du Diable (1949 牡 by Mieuxce ― ロイヤルオーク賞)
シャマン Chamant (1950 牡 by Majano ― 仏ダービー)
 & *ワードパン Wordpan (1957 牡 鹿 by Worden ― ドーヴィル大賞典)
*ボウプリンス Beau Prince (1952 牡 栃栗 by Prince Chevalier ― 仏グランクリテリウム)
*ヴィミー Vimy (1952 牡 鹿 by Wild Risk ― キングジョージVI世&クイーンエリザベスDS)
 & ミジェ Midget (1953 牝 by Djebe ― チェヴァリーパークS、クイーンエリザベスII世S、コロネーションS)

など一流馬を出していることから見て、おそらくはフィリーサイアー。でもって、その産駒中、最も繁殖成績に優れていたのが*ヴィミーの母ミミ Mimi だった…(Midget の娘に Mige ― チェヴァリーパークS、孫に Ma Biche ― 英1000ギニー が出る。ジャパンCに来た Fruits of Love は、この牝系の末裔)
 これもなかなか興味深い点です。

 これらの事実から、High Top がフィリーサイアーになる確率は(ダブルコピーの息子ほどでは無いにしても)ある程度見込まれますし、現時点で実績から判断する限り、High Top の遺伝子型は幸運にも(?)その確率内にヒットしていたということなのでしょう。

 したがって、冒頭に挙げた Northern Dancer x High Top のニックを産んだのは、High Top とNDのクロス・ニックス論的な意味での相性の良さと、High Top の母 Camenae の優れたX染色体であろうと結論できます。
 ただし前者については近交度はやや低く、比較的「競走」向きの組み合わせであること、後者については径路上に High Top が乗っていない場合は無意味であること(冒頭の表でも Top Ville 経由のものより伴性血縁にあたる牝馬経由の High Top が多かったですよね?)、この2つを忘れてはいけません。
 これらの問題において、当該ニックはかつての Nasrullah x Princequillo のニックと似た構造を持っており、それゆえ10年後には出てくるであろう〈組み合わせクロス〉も、通常予想されるほどには効き目を期待できないのです。
 逆にこの観点からは、Sinndar 内 High Top とは全く違う意味で、Samum 内 Cockade の活かし方はなかなか巧妙だ、とも考えられます。(-_☆ *スプラッシュオブカラーだって、牝駒は…?
 Dante から父系3代を経て、再び「フィリーサイアーにして主流血脈の友、おまけにどちらかと言えばスタミナ寄り」という個性を得るに至った High Top。この馬を通して、Dante 系の血はこれからも、いやささらに広く、拡散していくことでしょう。


2000/09/14 ― ( Revised on 2000/10/01-03, 10/09, 11/06, 2001/01/22 )
His story (= History) from ― Tony Morris : "Thoroughbred STALLIONS", The Crowood Press, 1990


目次へトップへ戻る