Focus Magazine
坂井正彦(スタン・サカイ) Interview
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 93年4月16日
FUSIGIなUSAGI―アメリカ人気コミックの作者は日系3世

いまアメリカのあちこちでウサギが飛び回っている。いっしょにネコやコーモリも活躍している。しかも、その名前はMIYAMOTOだったり、CHIZUだったり、GENNOSUKEだったり、日本流にいえば、宮本、千鶴、源之助ということになるのだろう、たぶん。そのキャラクターを生み出しているのが、写真の人物スタン・サカイさん(39)。南系3世で、いまアメリカで人気のマンガ「USAGI・YOJINBO」の作者である。マンガの主人公はMIYAMOTO・USAGI、作者によれば、もとはMIFUNEという大名に仕えていたが、主人はMUHONで殺され、いまはRONINの身となっているSAMURAI。

その彼にひそかに思いを寄せる女性はTOMOE・AME、長い髪と明るい笑顔が、やはり日系3世のシャロン夫人に似ているんだそうである。といっても登場人物は、すべて動物。「USAGIは黒沢ムービーに出てくる激情的なサムライとハリウッドの西部劇に出てくる正義漢のシェリフをミックスしたもの」と、ご本人。もともとサカイさんの父親は日系2世、軍人として日本にきているときに京都生まれ。小さいときから日本の昔話や童話を聞いて育ったのだとか。

幼少時代を過ごしたハワイでは近くに日本映画館があり、「浴びるほどサムライ・ムービーを見ていたんですよ」。最近は、いいサムライ・ムービーがないので、吉川英治の「宮本武蔵」の英語版などを読んでいるというし、もちろん「五輪書」や「鳥獣戯画」も勉強している。「USAGI」の版元であるファンタグラフィック・ブックスの担当編集者によると、「非常にユニークで、いままで体験したことのないマンガ世界」というしロスの書店主のビル・リーボウィッツさんは、「封建時代の日本について豊富な情報を持っているし、作者が共鳴している武士道も非常によく描かれている」と感心しきり。

実際、いままでの荒唐無稽なものと違って“天”“地”などという言葉が出てくると、ちゃんと脚注で説明もしてある。みずからの手で描いているため、コミック本が出るのは2カ月に1回だけれど、コンスタントに2万部売れているし、シリーズを合わせた単行本も、すでに5巻が出版されているとか。最近ではUSAGIを未来に置き換えた「SPACE・USAGI」も出版。テレビ・アニメの話も進んでいるという。ミュータント・ニンジャの例もあるから、ひょっとして日本でも耳を髷ふうに結んだウサギが、カメを追い抜かすことになるかもしれない。